ハヤカワ・ノヴェルズ追記 ノヴェライゼーションのこと


 ハヤカワ・ノヴェルズは最初期から映画の原作小説を柱の一つとして刊行してきた。また、映画のノベライズもかなりある。まだビデオが普及していなかった頃、こうした小説化作品(ノヴェライゼーション)は、映画を再体験できるツールとして、映画ファンのみならず多くの人たちの手に取られてきた。

 一般にオリジナルの小説よりも一段低いものとして扱われていたが、この特殊なジャンルのファンもいたし、また例えばマイクル・アヴァロンやマックス・アラン・コリンズのようにオリジナル作品で一家をなしてからも、多くのノベライズをものした作家もいた。

 ハヤカワ・ノヴェルズとして刊行されたノヴェラーゼーションには以下のようなものがある。

  • 『おしゃれ泥棒』マイクル・シンクレア[1966/10/15]
  • 『続・猿の惑星』マイクル・アヴァロン[1970/08/15]
  • 『怪奇な恋の物語』ヘンリー・クレメント[1970/09/15]
  • 恐怖のメロディ』ポール・J・ジレット[1972/04/15]
  • 『スコルピオ』スコルピオ[1973/11/15]
  • 『バッジ373』マイク・ルート[1974/05/31]
  • 『サンダーボルト』ジョー・ミラード[1974/07/31]
  • ジャガーノート』アル・ハイン[1975/02/28]
  • フレンチ・コネクション2』ロビン・ムーア&M・マクリン[1975/07/15]
  • 『ラッシー』ロバ-ト・ウィーバーカ[1979/06/30]
  • オール・ザット・ジャズ』H・B・ギルモア[1980/08/15]
  • 『ダブル・ジャック』ポール・ウィーラー[1980/11/30]
  • 『フェーム』リアノー・フライシャー[1980/12/15]
  • 『レイダース 失われた《聖櫃(アーク)》』キャンベル・ブラック[1981/10/15]

 さて、ここからが問題なのだが、46判で刊行された早川書房のノヴェライズ作品は、ほかにもあるだ。これらハヤカワ・ノヴェルズ以外のノヴェライゼーションについて、考察してみたい。
 
 まず、『卒業旅行』田波靖男/井出俊郎[1972/11/30]。

 



 あいにく所持していないので、ネットでひろった画像を添付するが、ちょっと見はハヤカワ・ノヴェルズのようである。中扉も、前回の『性の囚人』と同じで、ハヤカワ・ノヴェルズのデザインに似ているが、ロゴマークだけがないというタイプだ。推測するに、翻訳小説ではないため、ハヤカワ・ノヴェルズにはしなかったのだろう。

 しかし、1974年に出たジョージ・ホックスの『大地震』[1974/12/15]とリンダ・スチュワートの『エアポート'75』[1974/12/15]は、装幀も、スチール写真を多用したスタイルも、ハヤカワ・ノヴェルズとはまるで異なったものなっている。(これもネットでひろったもの)↓

 



 この時期は多くのノベライズがハヤカワ・ノヴェルズのレーベルで刊行されており、なぜこの二冊だけ違ったのか、よくわからない。

 さて、1980年代初頭までこうした46判ノベライズは刊行される。その中で、以下の二冊は、やはりハヤカワ・ノヴェルズではなかった。


宇宙大作戦 スター・トレックジーン・ロッデンベリイ[1980/06/15]
宇宙大作戦 スター・トレック2/カーンの逆襲』ヴォンダ・N・マッキンタイア[1982/12/31]

 ほぼ同時期の『レイダース 失われた《聖櫃(アーク)》』はハヤカワ・ノヴェルズなのに。

 


 考えられるのは、SFだから、か? すでにハヤカワ・ノヴェルズでのSF作品はなくなっていたし、かといって海外SFノヴェルズの枠では、いささか違和感がある。いきなり文庫にするよりも、まず単行本で売りたいとの思惑があったのか。いや、すべては想像ですが。