2007-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ロマン・フィユトン(6)

■ロマン・フィユトン/エミール・ガボリオのルコック探偵シリーズ ――フランス 1840年代〜1860年代 ガボリオの略歴について、簡単に触れておこう。 エミール・ガボリオは、1832年にフランス南西部の町ソージョンで生れた。公証人だった父親について各地を転々…

ロマン・フィユトン(5)

■ロマン・フィユトン/ガボリオと探偵小説の現実性 ――フランス 1840年代〜1860年代 中島河太郎は東都書房版・世界推理小説大系6巻『ガボリオ』の解説を、こう書き出している。 現代の推理小説の読者では、ガボリオの作品とは縁がないかもしれない。戦後この…

ロマン・フィユトン(4)

■ロマン・フィユトン/デュマとポーの仏訳 ――フランス 1840年代〜1860年代フレイドン・ホヴェイダの『推理小説の歴史はアルキメデスに始まる』は、フランス大衆小説について、こう語っている。 謎解き小説だけを推理小説ときめてかかる必要もないだろう。探…

ロマン・フィユトン(3)

■ロマン・フィユトン/ポール・フェヴァルとポンソン・デュ・テラーユ ――フランス 1840年代〜1860年代 ポール・フェヴァルは王立裁判所判事の父と貴族出身の母の間に、五人兄姉の末っ子として、1816年にレンヌで生まれた。もともと生活は楽ではなかったが、1…

ロマン・フィユトン(2)

■ロマン・フィユトン/ウージェーヌ・シューと『パリの秘密』 ――フランス 1840年代〜1860年代 十九世紀前半、とくに1830年代から50年代のフランスは、ヴィクトル・ユゴーに代表されるロマン主義の時代であった。ロマン主義とは、古典主義時代の規範や制約に…

ロマン・フィユトンについて

■ロマン・フィユトンについて ――フランス 1840年代〜1860年代 十九世紀フランス大衆小説は新聞連載小説(ロマン・フィユトン)としてはじまった。フランスの探偵小説も、その枠のなかで生成し発展することになる。

「刑事の回想録」

■「刑事の回想録」 ――イギリス 1850年代〜1860年代 「犯罪実話読物の系譜」の項でも述べたように、ウォーターズの『ある刑事の回想録』(1852米版/1856英版)以降、英国では世紀末にかけて「刑事の回想録」と銘打ったものが多数出版された。これらは現職ま…

センセーション・ノヴェル(6)

■センセーション・ノヴェル(6)/その後のコリンズ 『娯楽としての殺人』のウィルキー・コリンズの項には、以下のような文章がある。 ディケンズはおなじ時代のほとんどすべての作家に影響を及ぼしたが、彼に影響をおよぼした小説家はただひとりコリンズの…

センセーション・ノヴェル(5)

■センセーション・ノヴェル(5)/ウィルキー・コリンズと『月長石』 ウィルキー・コリンズに戻ろう。 『月長石』*1について語るときに必ず引用されるのは、T・S・エリオットの「最初にして最長、最良の現代イギリス探偵小説(modern English detective n…

センセーション・ノヴェル(4)

■センセーション・ノヴェル(4) シモンズは『ブラッディ・マーダー』で、チャールズ・フェリックス Charles Felix の『ノッティング・ヒルの怪事件』 The Notting Hill Mystery について触れている。1862年から翌年にかけて週刊誌《ワンス・ア・ウィーク》…

センセーション・ノヴェル(3)

■センセーション・ノヴェル(3) コリンズが「世界最初の長篇探偵小説」と言われることもある『月長石』を発表したのは1868年である。この作品に触れる前に、1860年の『白衣の女』からはじまったセンセーション・ノヴェルのブームの中で書かれた、その他の…

センセーション・ノヴェル(2)

■センセーション・ノヴェル ――イギリス 1850年代〜1860年代 チャールズ・ディケンズ(1812-1870)がある程度重要な役割をする職業的探偵を登場させたのは『マーティン・チャズルウィット』(1843-1844連載)が最初だった。この物語で殺人事件を捜査するのは…