ミステリの歴史

色による早分かりミステリー小説史(3)

●1970年代〜

色による早分かりミステリー小説史(2)

●黄金時代(1920〜1939) 第一次世界大戦が終わった頃から、ミステリーの世界に新しい時代がはじまります。謎解き中心の長篇作品が多く書かれたこの時代は、のちにミステリーの黄金時代と呼ばれています。推理の手掛りをきちんと読者の前に提示して、なおか…

色による早分かりミステリー小説史(1)

ネタとして、こんなもの書いてみました。ミステリを全く知らない人向けです。

女性探偵の系譜

世界初の小説上の探偵は、もちろん、ポーが創造したC・オーギュスト・デュパンである。「モルグ街の殺人」(1841)で登場したこの名探偵は、職務ではなく趣味で事件を解決する。イギリスの首都警察に刑事部が創設されるのは1842年だから、デュパンが読者の…

ヴァン・ダインとハメット

ヴァン・ダインが「アメリカ型探偵小説の東部スタイル」の創始者なら、ハメットは「アメリカ型探偵小説の西部スタイル」の創始者だ。片や、ニューヨークの上流階級を舞台に、素人探偵が、美術や文学の知識を振りかざしながら謎を解き、片や、サンフランシス…

世界ミステリ史概説7

■世界ミステリ史概説(7)/スパイ小説の時代(1960-1969) 1950年代が警察小説と犯罪小説(心理サスペンス)の時代だったとすれば、1960年代はスパイ小説(エスピオナージュ Espionage)の時代といえる。『カジノ・ロワイヤル』(1953)に初登場したイァン…

世界ミステリ史概説6

■世界ミステリ史概説(6)/ジャンルの発展と拡散(1950-1959) 1950年代になると、ハードボイルド派の作家に世代交代が見られるようになる。チャンドラーは『長いお別れ』(1953)を発表したものの、1959年には他界した。ジョン・エヴァンスやウェイド・ミ…

世界ミステリ史概説5

■世界ミステリ史概説(5)/第二次世界大戦と戦後(1940-1949) 1939年に始まった第二次世界大戦は1945年まで続いた。この時期、日本では探偵小説はまったくといっていいほど書かれなかったが、英米では多くのミステリ作品が発表されていた。しかし、戦争前…

世界ミステリ史概説4

■世界ミステリ史概説(4)/探偵小説の黄金時代(1918-1939) 第一次世界大戦が終結した直後から第二次世界大戦が始まる1939年までの20年間は、一般に探偵小説の黄金時代と呼ばれている。ホームズ以来のロマンティックな探偵小説から、恋愛や冒険の要素を切…

世界ミステリ史概説3

■世界ミステリ史概説(3)/短篇探偵小説の時代(1891-1917) ポーの短篇にはじまった探偵小説であるが、1840年代から1880年代までは、多くの探偵小説、またはそれに隣接する犯罪小説は長篇として発表された。読者の興味を引き続けるセンセーショナルな題材…

世界ミステリ史概説2

■世界ミステリ史概説(2)/ポーからドイルまで(1841-1890) 文学における犯罪と悪のテーマは古く世界共通であるのに、犯罪の解明を物語の中心的興味とした文学は近代になってからしか登場しない。探偵小説の生成を民主主義の達成と関連付ける説には眉に唾…

世界ミステリ史概説

長らく書いている「ミステリの歴史」だが、このペースでいくと、いつ終わりになるのか見当もつかないことになってしまった。まあ、自分が楽しみながらまとめているので、終わりにならなくてもいいのだけど。しかし、最初はおおざっぱな流れをつかんでみよう…

ドイルの十年

ええ、ほんとに久しぶりの追加。 サイトの方で書いていこうかと思ったけど、とりあえず、このブログには下書きとしてアップします。 ■ドイルの十年――1891〜1900年/イギリス(その2) 1891年から1900年までの短篇探偵小説のシリーズで、アーサー・モリスン…

ホームズのライヴァルたち

1891〜1901年のホームズのライヴァルたち 中間報告として。

サイトにアップ

屋根裏通信に「ミステリの歴史」のこれまでの分を、まとめなおしました。まだ途中までですが、文章もかなり加筆訂正してあります。 お暇な方は、読んでみてください。

1891〜1900年/イギリス

■ドイルの十年――1891〜1900年/イギリス エラリイ・クイーンは短編集によるミステリ発展史《クイーンズ・クォーラム》の中で、1891〜1900年を「ドイルの十年 The Doyle Decade」と呼んでいる。言うまでもなく1891年はシャーロック・ホームズの短篇シリーズが…

1890年代――短篇探偵小説時代のはじまり(2)

■シャーロック・ホームズ――偉大なる探偵 《ストランド・マガジン》に、1891年から1892年にかけて連載された『シャーロック・ホームズの冒険』(1892)と、1892年から1893年にかけて連載された『シャーロック・ホームズの思い出』(1894)の2冊、24編*1のシ…

19世紀最後の10年――年表

今後の流れを見るうえで、こんなものを作ってみた。

前回の補遺

前回、ドイルが発案したのはあくまで「一人の人物が各号で活躍するような話」であって、それが探偵小説のシリーズとは限らなかった、ということを記した。事実、シャーロック・ホームズの連載をやめた翌年の1894年から1895年にかけてストランド誌に連載した…

短篇推理小説の時代

1890年代――ホームズ短篇シリーズの開始 1887年、『緋の研究』が探偵小説界に爆弾のように投ぜられ、つづいてわずかの年月のうちに、輝かしくも驚嘆すべきシャーロック・ホームズものの短編シリーズが世に現れたのである。(『犯罪オムニバス』序文/田中純蔵…

日本――1880年代

●日本――1880年代/黒岩涙香の翻案探偵小説 ガボリオが生み出した長篇探偵小説は、本国のみならず、1860年代末からはロシアで、1870年代にはアメリカで、1880年代初めにはイギリスでブームをよんだ。その人気にあやかるかのように、あるいは揶揄するかのよう…

シャーロック・ホームズ登場す

●イギリス――1880年代/シャーロック・ホームズ登場す イギリスで1887年に出版された『二輪馬車の秘密』と『緋色の研究』の二作の長篇探偵小説の作者、ファーガス・ヒュームとコナン・ドイルは同年の生れである。1859年5月22日にドイルが生まれ、1859年7月…

イギリス――1880年代/ファーガス・ヒューム

●イギリス――1880年代/ファーガス・ヒューム――「探偵小説」を書きまくった男 ファーガス・ヒュームが『二輪馬車の秘密』を書いた動機を自ら語った文章が、『ブラッディ・マーダー』に引用されている。 メルボルンで最大の書店の主人に、いちばんよく売れる書…

イギリス――1880年代

●イギリス――1880年代/綺譚の時代 イギリスではアメリカやロシアよりも遅れて、1880年代の前半にガボリオが、後半にはデュ・ボアゴベが翻訳紹介される。やはり人気を博したらしく、1885年には『ルルージュ事件』の剽窃版とされるチャールズ・ギボン (1843-18…

チェーホフの探偵小説

●ロシア――1880年代/チェーホフの探偵小説 アントン・チェーホフの探偵小説としては、短篇「安全マッチ」(1884)がよく知られている。この作品は英米では、前述のジュリアン・ホーソーンのアンソロジーや、ヴァン・ダインが1927年に編纂したアンソロジー Th…

チェーホフと「ロシアのガボリオ」

●ロシア――1880年代/チェーホフと「ロシアのガボリオ」 アントン・チェーホフ(1860-1904)は唯一の長篇小説『狩場の悲劇』(1884-1885連載)の中で、登場人物の新聞編集者にこう語らせた。 問題は、わが国の気の毒な読者たちが、もうとっくにガボリオーだの…

アメリカ――1880年代

■アメリカ――1880年代 アメリカでは1870年代からガボリオの作品が翻訳紹介され、その影響を受けて1878年にアンナ・カサリン・グリーンの作品が登場、人気を勝ち得た。アンナ・カサリン・グリーンに影響を与えたのは、ガボリオだけではない。上流階級の家庭悲…

アンナ・カサリン・グリーン(承前)

■アンナ・カサリン・グリーン――「探偵小説の母」(承前) アンナ・カサリン・グリーンの処女作『リーヴェンワース事件』(1878)は、どういう話なのか。簡単に紹介しておこう。 ニューヨークの富豪リーヴェンワース氏が深夜、自宅の書斎で殺された。彼は二人…

アンナ・カサリン・グリーン

■アンナ・カサリン・グリーン――「探偵小説の母」 再開します。

1870年代の探偵小説

■1870年代の探偵小説 エドガー・アラン・ポーが1840年代に生み出した「探偵小説」は、1850年代から60年代にガボリオ、ディケンズ、コリンズたちの手によって、さまざまに発展してきた。しかし、1860年代以降、シャーロック・ホームズが登場する1880年代末ま…