MWAジュヴナイル賞1964-65年


 1964年のMWAジュヴナイル賞を受賞したのは、フィリス・A・ホイットニーの Mystery of the Hidden Hand。ホイットニーは第一回(1961年)に続いて二度目の受賞である。この作品も邦訳されていないので、読めない。


 候補作はフランク・ボナムの Honor Bound とマーガレット・シャーフの Mystery of The Velvet Box の2作。

 フランク・ボナム Frank (Cecil Francis) Bonham (1914-1988)はカリフォルニア州ロサンゼルス生れ。1940年年代から西部小説を発表し、いくつかのミステリ系作品もある。1960年から児童向き作品を書きはじめ、Honor Bound (1963)はその4作目のようだ。この後も、Mystery of the Red Tide (1966)と Mystery of the Fat Cat (1968)がMWAジュヴナイル賞の候補にあがるが、結局一度も最優秀賞をとることはできなかった。1970年代を通じてジュヴナイルを発表している。

 マーガレット・シャーフ Margaret (Louise) Scherf (1908-1979)はウェスト・ヴァージニア州フェアモント生れのミステリ作家。出版社勤務を経て1940年に作家デビュー。以後、1978年までに20冊以上の長篇を書くが、邦訳はない。『世界ミステリ作家事典[本格派篇]』によると、ユーモアと謎解きを融合させた作風とのこと。1963年から65年にかけて、3冊の児童ミステリのシリーズを執筆し、Mystery of the Velvet Box はその第1作である。

 この年のグランドマスターはジョージ・ハーマン・コックス、最優秀長篇賞はエリック・アンブラーの『真昼の翳』が、最優秀処女長篇賞はコーネリアス・ハーシュバーグの『殺しはフィレンツェ仕上げで』が受賞している。

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 1965年は、マルセラ・ツームの Mystery at Crane's Landing が最優秀ジュヴナイル賞に輝いた。

 マルセラ・ツーム Marcella Thum (1924- )は1970年代に大人向けのミステリ作品を数作、発表している以外、よくわかなない。作者名はタムまたはサムかもしれない。

 候補作は3作。エレノア・キャメロンの A Spell Is Cast と、リー・キングマンの Private Eyes と、ハル・G・エバーツの Treasure River だ。

 エレノア・キャメロン Eleanor (Frances, nee Butler) Cameron (1912- )はアメリカの児童文学作家。カナダのマニトバ州ウィニペグに生れ、ロサンゼルスの図書館に勤めながら児童文学を書き始める。邦訳のある『きのこ星たんけん』(1954)[講談社/1957]が第1作である。この作品は児童向けSFの名作として評価が高いようだ。1971年には A Room Made of Windows (1971) でボストン・グローブ=ホーン・ブック賞を、1974年には The Court of the Stone Children (1973) で全米図書賞の児童書部門を受賞している。

 リー・キングマン (Mary) Lee Kingman (1919- )はマサチューセッツ州リーディング生れの児童文学者、編集者。1940年代から児童向け小説を発表。『ピーターのとおいみち』(1953)[講談社/1972]、『まほうのクリスマスツリー』(1956)[偕成社/1968]、『アレックと幸運のボート』(1986)[岩波書店/2002]が邦訳。

 ハル・G・エバーツ Hal G(eorge) Evarts (,Jr.) (1915-1989)はおそらく、西部小説集『駅馬車』[ハヤカワ文庫NV]に「埃まみれの伝説」が収録されている作家と同一人物と思われる。西部小説では有名な人なのだろう。1930年代に同名の映画監督もいるようだから、こちらがお父さんか。1969年にも、Smugglers' Road でジュヴナイル賞の候補になっている。

 この年のグランドマスターはなく、最優秀長篇賞はジョン・ル・カレの『寒い国から帰ってきたスパイ』、最優秀処女長篇賞はハリイ・ケメルマンの『金曜日ラビは寝坊した』が受賞した。