戦後ジュヴナイル・ミステリの系譜(9)

■1945〜1949(昭和20年〜24年)その9/その他の出版社の大衆児童文学1

 講談社、光文社、偕成社ポプラ社以外の出版社の、1945年から1949年(昭和20年〜24年)の間に出版された大衆児童文学の概要を、根本正義の「〈書誌〉占領下の少年小説・少女小説・少年講談――偕成社ポプラ社講談社・東光出版社・光文社を除く六十五社の出版物」(東京学芸大学紀要第2部門/人文科学 Vol.55)http://ir.u-gakugei.ac.jp/handle/2309/2692 および「〈書誌〉東光出版社の少年小説・少女小説――「少年少女読物」シリーズ等の内容について」(「文学と教育」2001年12月号)を参考資料としてまとめておこう。


 東光出版社は戦後いち早く、大衆児童文学の出版をはじめている。その開始は1947年2月発行の南洋一郎『ほゆる密林』からだから、光文社の痛快文庫(1947年6月〜)やポプラ社の創業(1947年8月)よりも早い。敗戦の翌年(1946)から少女雑誌『蝋人形』を発行していたという情報もあり*1、また1948年12月創刊の娯楽少年雑誌『東光少年』を発行したことでも知られる(1951年3月で休刊)。同誌には海野十三の『少年探偵長』(1949-01〜11)や西條八十の『悪魔博士』(1949-01〜)、大下宇陀児の『夜光魔人』(1950-09?〜1951-01?)などの探偵小説が連載された。また、時期はずれるが、1950年から1951年にかけて「海野十三全集」8巻(当初予定は10巻)と「西條八十選集」3巻を、1958年に「少年少女最新探偵長篇小説集」10巻(当初予定は6巻)を刊行している。

 前記資料をもとに、この時期の東光出版社の児童書の刊行書目をみてみよう。△は戦前作品の復刊、●は戦後の新作、◎は少年講談である。例によって、戦前・戦後の区分けは間違いも多々あることをお断りしておく。

  

  • 1947年
  • 1948年
    • ●『北洋の射撃王』寒川光太郎/飯塚羚児・絵    1948
    • △『月笛日笛(続)』吉川英治/斎藤五百枝・絵   1948-01-20
    • △『怪鳥艇』海野十三/村上松次郎・絵       1948-02-05
    • △『夜の猛獣狩り』南洋一郎鈴木御水・絵     1948-03-05
    • △『ひよどり草紙』吉川英治/斎藤五百枝・絵    1948-03-15
    • △『朝顔夕顔』吉川英治/斎藤五百枝・絵      1948-03-20
    • ●『海の兇賊 黒星(ブラックスター)』南洋一郎鈴木御水・絵 1948-04-25
    • ●『悲しき草笛』西条八十/大槻さだお・絵     1948-04-30
    • ◎『岩見重太郎』原重郎              1948-05
    • ●『嵐に咲く花』山中峯太郎/大槻さだお・絵    1948-05-20
    • △『むらさき草紙』三上於菟吉/伊藤幾久造・絵   1948-06-05
    • △『爆薬の花籠』海野十三/伊藤幾久造・絵     1948-06-20
    • ◎『宮本武蔵』阿出川節夫/伊藤幾久造・絵     1948-07-20
    • ●『猛犬はやぶさ』太田黒克彦/伊勢良夫・絵    1948-08?
    • ●『級(クラス)の明星』西条八十/大槻さだを・絵 1948-08-15
    • ◎『塚原卜伝』大平陽平              1948-08-20
    • ●『まぼろし船』南洋一郎/高木喜代治・絵     1948-09-10
    • △『左近右近』吉川英治/伊藤幾久造・絵      1948-09-10
    • ●『渦まく宝島』山中峯太郎/伊藤幾久造・絵    1948-09-20
    • ●『黒林の剣侠』尾崎士郎       1948-09-30 ★「砂漠の若武者」併録
    • ●『北極の妖星』南洋一郎/大槻さだを・絵 1948-09-30 ★『黒星』の続編
    • ●『神のむすめ』加藤武雄             1948-10
    • ●『夜の祈り』片岡鉄兵/伊勢良夫・絵       1948-10-10
    • △『海賊船伝奇』大佛次郎/伊勢良夫・絵      1948-10-30
    • ◎『柳生重兵衛』原重郎/伊藤幾久造・絵      1948-10-30
    • ●『夜霧の乙女』西条八十             1948-11-10
    • ●『美しき虹』吉田絃二郎/(渡辺郁子) 1948-11-12 ★挿絵は表記なし
    • △『左近右近(続)』吉川英治/伊藤幾久造・絵   1948-11-15
    • △『翼の抒情歌』川端康成/伊勢良夫・絵      1948-11-25
    • ●『原子力宇宙船』飯田幸郷            1948-12
    • ●『熱砂の十字架』山中峯太郎           1948-12
    • ●『夕月乙女』西条八十              1948-12-05
    • ●『三十年後の世界』海野十三/飯塚羚児・絵    1948-12-15
  • 1949年
    • ●『湖畔の乙女』西条八十/大槻さだを・絵     1949-01-15
    • ●『悲しき牧歌』中河与一/山本八千代・絵     1949-01-20
    • ●『想い出の歌』浅原六朗東恵子・絵       1949-02-20
    • △『鞍馬天狗 青銅鬼』大佛次郎/伊藤幾久造・絵  1949-02-20
    • △『幽霊鉄仮面』横溝正史/伊藤幾久造・絵     1949-02-25
    • ●『太陽の子等』富田常雄/斎藤五百枝・絵     1949-04-05
    • △『新州天馬侠 一巻』吉川英治/山口将吉郎・絵  1949-05-01
    • ●『白百合の君』西条八十/松田文雄・絵      1949-05-051
    • △『新州天馬侠 二巻』吉川英治/山口将吉郎・絵  1949-06-01
    • ●『陽炎の丘』川端康成/大槻さだを・絵      1949-06-05
    • △『新州天馬侠 三巻』吉川英治/山口将吉郎・絵  1949-07-05
    • ●『怪星ガン』海野十三/弦牧男・絵        1949-09-10
    • ●『父の星』尾崎士郎/伊藤幾久造・絵  1949-10-10 ★『東光少年』連載
    • △『天兵童子(前篇)』吉川英治       1949-12
    • △『天兵童子(続)』吉川英治        1949-12
  • 1950年
    • ●『悪魔博士』西条八十           1950-02-05 ★『東光少年』連載
    • ●『少年野球夜話』サトウ・ハチロー/生沢朗・絵  1950-05-10
  • 1951年以降
    • ●『われは山の子』尾崎士郎/渡辺鳩太郎・絵 1952-06-20 ★『中学生の友』連載/出版社名は春歩堂
    • ●『少年探偵長』海野十三/伊藤幾久造・絵 1952-09-30 ★『東光少年』連載
    • ●『虹の港』富田常雄/渡辺鳩太郎・絵     1953-10-01
    • ●『サーカスの怪人』筒井敏雄/伊藤幾久造・絵 1953-12-25 ★『小学四年生』連載?
    • ●『少年行進曲』尾崎士郎/霜野二一彦・絵   1954-07-05 ★『おもしろブック』連載
    • ●『竜虎二少年』下村悦夫/伊藤幾久造・絵 1954-11-15 ★1948年初刊?
    • ●『風雲幽霊城』筒井敏雄/伊藤幾久造・絵   1954-11-15
    • ●『二代目・猿飛佐助』筒井敏雄/山忠・絵   1954-11-30
    • △『怪鳥艇』海野十三/村上松次郎・鈴木御水・絵 1954-11-30 ★増補版
  • 発行年月不明

 ポプラ社と同じく、この時期には世界名作文学の翻案は一冊もない。少女小説も、刊行数が少ないため、省略せずに、判明した限りのものを記した。1950年以降のものもリストアップしたのは、次の時代にあつかう予定の前記叢書を除くと、この時期以降、確認できる急激に児童者の出版点数が減少するからである。つまり、東光出版社のリストは、ほとんどこれで終わっているといってもいいのだ。

 さて、刊行書目を眺めると、吉川英治を中心とした時代小説、南洋一郎の冒険小説、海野十三の科学探偵小説、西條八十少女小説と、基本構成は偕成社ポプラ社と大きな違いはない。少年講談も数冊、刊行されている。*2ジュヴナイルでは秘境冒険小説と探偵小説の区別は難しいが、冒険ものに比べて、現代を舞台とした探偵小説は、やはりそれほど多くないといる。「〈書誌〉東光出版社の少年小説・少女小説――「少年少女読物」シリーズ等の内容について」から、探偵物およびその周辺と思われる作品の紹介内容を、いくつか引用してみよう。

  • 『謎の透明世界』海野十三
    • 誰もいない廊下にスリッパの音がする!試験管の溶液がタラタラとこぼれてそこに女の顔がうつる!恐怖と謎と秘密の世界をえがいた怪奇探偵小説。警視庁の名刑事と私立探偵帆村荘六が、ふしぎな幽霊を追って大活躍!声だけの幽霊、しまっている室を抜けてしまう怪美人、その正体は何! 謎は謎を生んで怪また怪奇、四次元の世界とは何か、四次元の世界に入るとどんなことがおこるか、その秘密がこの本だ。おそろしい場面、こわい話、思わずぞくそくっとして夜一人ではとても読めない恐怖の連続だ! ラジオ放送にもなって全国八〇〇万の聴取者をおどろかせ、おそれさせ、名探偵の活躍に拍手をおくった大傑作長編探偵小説! 敏腕の名探偵と快少年の目ざましい活躍!
  • 『爆薬の花籠』海野十三
    • 太平洋をあかりを消してひそかに進む怪しい小貨物船、突如船内に大格闘が始まる、続いて物凄いひびきを立て大爆発が起る。名探偵帆村荘六の行方不明事件、貨物船の底にとじこめられたサーカスの美少女と少年はどうなるか。義足の快青年は何者か? 貨物船のあやしい乗組員や、某国の秘密世界の謎BB薬をめぐる息詰まる大探偵小説。
  • 『少年探偵長』海野十三
    • ばく大な財宝の秘密の鍵、黄金メタルのかけらをめぐって複雑怪奇、悪人と少年のちえくらべ海野先生最後の傑作。
  • 『大アマゾンの魔塔』南洋一郎
    • 南米大アマゾンの奥地は人跡未踏の魔境、その密林にそそり立つ古い魔塔の秘密は何。いろいろの学者や怪人が魔塔の秘密を探って大競争。正義の冒険少年、怪獣毒蛇の秘境に展開する熱血冒険物語は若い少年読者の血を湧かさずにはおかない。凄い現地写真入。
  • 『豹(ジャガー)の眼』高垣眸
    • アッ、あぶない!敵の眼がせまる!ピストルがしのびよる!秘密怪盗団のまっただ中にただ一人で乗り込む快少年南米の大平原に大都会に大波乱をまきおこす、高垣眸先生がとっておきの名作。美少女錦花をさらって少林寺拳法の達人王を狙う怪盗ジャガー、岩窟の神殿にピストルと妖女とジャガーと巣食う大秘密盗団、王族の血を受けたたった一人の少年モリーの奮起、霧の深い夜南京町にさまようデュカン探偵、笑いながら死ぬ笑い薬のかわいそうなぎせい者、酒場のテーブルが飛んで少林の秘技がうなる活躍、痛快最後まで息づまるような面白さ。怪奇、ぞくぞくと展開する凄い場面。生か死か!一本の縄が運命を決する読んでも読んでもあきない大傑作。ピストルと豹(ジャガー)の群に飛び込んだ拳法の達人と柔道の名人の大活躍のれんぞく!かつての名作を今度新しく書き直していよいよ痛快無類に組上げた大力編。
  • 『牢獄の天使』高垣眸
    • オランダのある重罪犯人をあつかう牢番長の天女のようにやさしく心の清らかな娘が気の毒な囚人をいたわり、遂いにあわれな青年囚人をたすけるために大波らんをまきおこす涙と友情の物語。
  • 『怒れる野象』伊東福二郎
    • 父の仇、キバの折れた大象、恩人の仇でもあるこの象をうちとらんものと、夜を日をついで猛獣とたたかいながら密林を探検、やっと見つけた大象を相手に必死の決闘をいどむ痛快男児の物語。アフリカ蛮地でくりひろげられるおそろしい活劇。毎ページ勇壮なさしえ入り、総オフセット(美術印刷)刷りの豪華本。
  • 『嵐に咲く花』山中峯太郎
    • 美しい女首領謝凛華と其の部下の兇悪なギャングにさらわれた富豪の娘桂子。ギャングの秘密を知っている美しい美知子と哲夫兄妹。ギャング団は上海から東京へ!悪の魔手は科学者の秘密光線公式にのびる!科学者の可憐な娘英子の運命は? 機知と敏腕の美知子の活躍!息づまる波らんのうちに展開される大傑作!
  • 『怪盗Z団』星山静雄
    • 花の都パリーに出没する怪盗Z(ジゴマ)団、犯行のあとに必ず「Z」という署名入の置手紙をする。誘拐、殺人、等々次々に起る怪事件に市民はおびえ、警察はけんめいの捜索を続けている。名探偵、勇敢なパルン少年の活躍、それにしても、怪盗Z団とは何であろうか?
  • 『サーカスの怪人』筒井敏雄
    • 行方不明の父を探す少年がサーカス団の純情な少女を味方に、世にも恐ろしい怪人団と胸おどる智えくらべ!
  • 『猛犬はやぶさ』太田黒克彦
    • 父をたづねて旅にさ迷う少年三太と世界で一番強い蒙古犬と大狼の間に生れた猛犬「はやぶさ」!が兄弟のやうにたすけあふ。「ガオウ!」三太あやうしと見ると、熊も狼も一撃に倒す物凄さ! 上海の大怪盗団の秘密、大蒙古奥地の砂金取りの大冒険、シベリヤの大密林や人跡未踏のスタノボイ山嶺の夜営、魔の大氷河次々に襲い来る危険と波瀾が三太とはやぶさにふりかかり読み出したら最後までやめられない。
  • 『幽霊鉄仮面』横溝正史
    • 大都会を恐怖のどん底に叩きこんだ魔の鉄仮面。何月何日にはお前の命は貰うと厳重に張りめぐらされている警戒網をあざ笑い、次々に脅迫状を書き残し、この脅迫状の舞い込んだ人間は必ず殺される。その神出鬼没思わず手に汗にぎる。怪人鉄仮面とは何者?

 少女小説でも、西條八十の『夜霧の乙女』や『湖畔の乙女』も探偵小説といえるから、この時期までのポプラ社よりも、探偵ものが占める割合は高いかもしれない。しかし偕成社のような横溝正史高木彬光香山滋などの探偵小説プロパーの新作はない。唯一入っている横溝正史の『幽霊鉄仮面』は戦前の作品だ。かわりに海野十三南洋一郎の作品が多いことが挙げられよう。珍品は星山静雄の『怪盗Z団』で、この作者については詳しいことは不明だが、紹介文を読む限り、ジゴマ対パルン少年(ルパンの誤記ではない! それとも、広告文の誤植か?)の戦いという、いかにもパチモノな内容がそそられる。

 昭和20年代前半に大衆児童読物を積極的に刊行していた出版社に、妙義出版社がある。東光出版社が『東光少年』を出したように、妙義出版社も『太陽少年』という児童向け娯楽雑誌を1950年4月から1955年6月まで発行していた。それに先立って、児童書単行本の刊行を1947年4月からスタートさせている。シリーズ名は特になかったようだが、『心の詩集』(1949-07-30)巻末の広告欄では、すでに「少女小説」「少年小説」と区別されている。以下のリストは、それを含め、この時期に発行された児童向け小説を判明したかぎり挙げた。また1948年には大判の幼年向け「童話文庫」も刊行したほか、『小さな科学者』『小さな医学者』『小さな考古学者』『たのしい算数学校』などの「科学シリーズ」もこの時期に発行している。

  • 【少年少女読物】 B6判
    • 『少年讃歌』佐藤紅緑/斎藤五百枝・絵   1947-04-10
    • 『暁の旗風』山手樹一郎小松崎茂・絵   1948
    • 里見八犬伝(白龍の巻)』高垣眸     1948
    • 陸奥の嵐』千葉省三/山口将吉郎・絵   1948-04-01
    • 『愛の翼』水島あやめ/辰巳まさ江・絵   1948-05-01
    • 『嵐の小夜曲(セレナーデ)』横山美智子/辰巳まさ江・絵 1948-08-01
    • 『君よ知るや南の国』加藤武雄/蕗谷虹児・絵 1948-08-30
    • 『魔海の秘宝』南洋一郎/飯塚羚児・絵   1948-09-15
    • 『剣侠二つ星』千葉省三          1948-10
    • 『怪童小源太』鈴木彦次郎/伊勢良夫・絵  1948-10-01
    • 『秋風の曲』水島あやめ/辰巳まさ江・絵  1948-11-01
    • 『風雲白馬岳』子母沢寛/斎藤五百枝・絵  1948-11-15
    • 『黒狼龍騎兵』子母沢寛/伊藤幾久造・絵  1948-11-15
    • 『謎の百万両―黒狼龍騎兵 下巻』子母沢寛/伊藤幾久造・絵 1948-11-15
    • 『暁の歌』大倉桃郎/伊勢良夫・絵     1949-02-01
    • 『血誓花吹雪』鈴木彦次郎/(挿絵表記なし) 1949-02-15
    • 福沢諭吉』宮下正美/伊勢良夫・絵    1949-02-15
    • 『悲しき花園』田郷虎雄/辰巳まさ江・絵  1949-03-15
    • 『嘆きの花嫁人形』水島あやめ/渡辺郁子・絵 1949-04-15
    • 『悲しき栄冠』宮脇紀雄/渡辺郁子・絵   1949-04-15
    • 『谷間の白百合』船山馨/渡辺郁子・絵   1949-05-15
    • 愛の夢』谷村まち子/渡辺郁子・絵    1949-06-30
    • 『少年戦線』大倉桃郎/伊勢良夫・絵    1949-07
    • 『あこがれの星』水島あやめ/渡辺郁子・絵 1949-07-15
    • 『ばらの咲く窓』小山いと子/高木清・絵  1949-07-30
    • 『心の詩集』富田邦彦/高木清・絵     1949-07-30
    • 『白百合日記』田郷虎雄/辺郁子・絵    1949-09-15
    • 『夢見る白鳥』宮脇紀雄/高木清・絵    1949-09-20
    • 『あゝ君呼ぶ山脈』小野忠孝/渡辺郁子・絵 1949-09-30
    • 『熱球は飛ぶ』富田邦彦/斎藤五百枝・絵  1949-10-15
    • 『乙女の便り』横山美智子/山本貞・絵   1949-10-30 ★実用書
    • 『匂い菫』三木澄子/山本貞・絵      1949-10-30
    • 『水の王者(古橋選手の活躍)』富田邦彦/斎藤五百枝・絵 1949-10-30 ★伝記
    • 『母の灯』竜胆寺雄/高木清・絵 1949-11-15
    • 潮騒(しおざい)の歌』中河与一/高木清・絵 1949-12-01
    • 『迎春花(げいしゅんか)ひらく頃』江間章子/山本サダ・絵 1949-12-10
    • 『君死なばわれも』小野忠孝/門脇卓一・絵 1950-01-15
    • 『月光の曲』江間章子/石井けい子・絵   1950-03-15
    • 『幸福な世界の乙女たち』船山馨/門脇卓一・絵 1950-04-15
    • 『日本の恩人マッカーサー元帥』池田宣政/吉田廉三郎・絵 1951-05-15 ★伝記
    • 『どくろの謎』久米元一            ★発行年月不明
  • 【童話文庫】 A6判
    • 『イワンの馬鹿』水谷まさる/川上四郎・絵 1948-05-15 ★トルストイ原作
    • 雪の女王』水島あやめ/遠山陽子・絵         ★広告による
    • ガリバーのぼうけん』久米元一/耳野卯三郎・絵    ★広告による

 子母沢寛の『風雲白馬岳』は昭和12年に『少年倶楽部』に連載された時代小説だが、単行本化されたのはこの妙義出版社のものが最初と思われる。『黒狼龍騎兵』『謎の百万両』も、この版が初刊本のようだ。上記リストで探偵小説といえるのは久米元一の『どくろの謎』しかない。他には南洋一郎『魔海の秘宝』がかろうじて周辺ジャンルといえようか。共に根本書誌から粗筋を引用する。

  • 『どくろの謎』久米元一
    • あかずの間に起きた不思議な出来事と怪奇などくろの謎をめぐりくり広げられた血湧き肉おどる探偵小説。
  • 『魔海の秘宝』南洋一郎
    • 少年潜水夫、勇吉少年が深海の謎豊太閤の秘宝を求める迄の手に汗握る痛快に満ちた海洋冒険物語。

 妙義出版社は1950年代に入ってから「少年少女名作文庫」という叢書を出すのだが、それはまたその時期にあらためて述べよう。

*1:Webサイト「戦後日本少年少女雑誌データベース」http://manga-db.fms.co.jp/bgmag/index.aspx

*2:念のために付記すると、『柳生重兵衛』や『新州天馬侠』の題名は間違いではない。