『甦る昭和脇役名画館』鹿島茂 講談社

甦る昭和脇役名画館

甦る昭和脇役名画館

 1970年代のプログラム・ピクチャーを、脇役を中心に語った本である。夏休みに吉祥寺の古本屋で買ったのをちびちび読んでいた。



 わたしが映画をもっとも見ていたのは、1970年代の終わりから80年代の初めにかけてだから、この本で取り上げられた作品で見ているものは少ない。。にっかつロマン・ポルノはほとんど末期のものしか知らないし、東映ポルノは数作しか見ていない。新東宝など、よっぽど著名な作品で、なんどか名画座にかかるようなものだけである。

 しかし、著者の語り口は大変に面白く、とくに粗筋を嬉々として語ってくれるので、楽しく読むことが出来た。この粗筋を嬉々として語る、というのは、映画や小説を批評的に取り上げる上で効果的な方法だと思う。

 今月号のユリイカ斎藤美奈子石原千秋の対談を読んでいたら、石原が(小説に限らず)物語の粗筋を語る快感について述べていた。淀川長治のテレビの映画解説について「粗筋を語っているだけなんですよね」といい、蓮實重彦がそれが最高の映画評だと褒めた、というエピソードを紹介している。自分が読んだり見たりした作品の粗筋を楽しげに語る、その語り口調そのものが、その映画をどう見たのかを表現している、ということなのだろう。
 この『甦る昭和脇役名画館』でも、著者の語る映画粗筋を読んでいるうちに、その映画をぜひ見なくてはいかん、という気持ちになる。

 取り上げられた「脇役」は、荒木一郎ジェリー藤尾岸田森佐々木孝丸伊藤雄之助、天地茂、吉澤健、三原葉子川地民夫芹明香渡瀬恒彦成田三樹夫の十二人。それぞれ三本立てになぞらえて、三作が語られる。このうち、荒木一郎、吉澤健のニ人については、これまで出演作品を見たことがないと思う。取り上げられた三作をすべて見ていたのは岸田森(「呪いの館 血を吸う眼」「血を吸う薔薇」「黒薔薇昇天」)だけで、二作まで見たことがあるのが天地茂(「憲兵と幽霊」「東海道四谷怪談」/もう一作の「女吸血鬼」は結局見損なったままだ)、芹明香(「マル秘色情めす市場」「仁義の墓場」)というオソマツさだが、それでも、当時の映画の雰囲気の一部を知っているので、読んでいて懐かしい。

 なんとか見たいと思う作品は、

 最近は映画館に行く時間も気力もないので、どこぞからDVDで廉価で出していただけると、大変うれしい。