ひと休み

 「ミステリの歴史」はしばらくの間、中断しよう。
 アンナ・カサリン・グリーンをなかなか読み終われないし、このあとのホームズの時代をまとめるのに相当時間がかかりそうだから。

 ところで、もう少し先の話になるのだけど、1920年代のアメリカの探偵小説の動きは、ハメットとヴァン・ダインの二人を並行して扱う必要があると考えている。

 「中原行夫の部屋」http://homepage1.nifty.com/y_nakahara/index.htmlというサイトの「ミステリ資料室」にある「海外ミステリを読む」を読ませてもらっていたのだが、そこで指摘されているように、ハメットとヴァン・ダイン1920年代にほとんど併走していた作家なのである。どちらも「20年代の落とし子」と言えそうな気がする。いや、どちらがより「20年代の落とし子」かというと、ヴァン・ダインのほうだろう。彼は1920年代という「狂乱の時代」でこそデビューでき、ヒットした作家だった。ファイロ・ヴァンスという珍妙な名探偵像は、その時代を抜きにしては語れない(はずである)。したがって、20年年代を過ぎると、急速にその存在が希薄になる。

 アート・バーコーの The Mystery Lover's Companion では、ヴァン・ダインを「アメリカ探偵小説の東部スタイルの創設者」としていた。「イースタン・スタイル」に対する「ウェスタン・スタイル」がハードボイルド・ミステリを指しているのは間違いないだろう。つまり、1920年代に、アメリカ独自の探偵小説スタイルが二種類出来上がったのだが、それはほぼ並行して生成されていったのである。

 ちなみに、年齢からいうと、ハメットはヴァン・ダインよりかなり若く、チャンドラーとヴァン・ダインがほぼ同年の生れである。(ヴァン・ダインが一年上)