ミステリマガジン

今月は「愛しのレイモンド・チャンドラー」特集。村上春樹訳の「ロング・グッドバイ」がちょっとだけ読める。小鷹信光氏が、一人称がどうなるのか気にされていた。まさか「僕」ではあるまい、とおっしゃっていたが、一抹の不安をぬぐえないようだった。「私」でよかったねえ。若い頃のマーロウなら、田中小実昌風に「おれ」だったろうか。

レイモンド・チャンドラー年譜」を眺めていると、チャンドラーって古い人なんだってわかる。『四つの署名』発表の年に生まれ、『ブラウン神父の童心』が出たのが24歳の時、クリスティの『スタイルズ荘』発表が31歳の時なんだよ。つまり英米のいわゆる黄金時代をチャンドラーは30過ぎてからリアルタイムに体験しているわけだ。そりゃあ、リアリティがないって苦情のひとつも言いたくなるのはわかる。10代で読書体験したら、違っていたかもしれない。

いろいろな方のチャンドラー賛歌を読んでいって、ページをめくると、小鷹信光はあいかわらずのカーター・ブラウン話。いやあ、思わず笑ったね。