- 作者: 首藤瓜於
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/11/30
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あの『脳男』の続編である。
『脳男』は衝撃的だった。このテーマでもう一編、続編を書きたいという作者の言葉を信じて待って、あれからもう七年か……
事件は、前回の一年後となっている。こちらは七年たっているので、細かいことはほとんど忘れている。本当なら、前作を読み直してからのほうがいいだろう。「鈴木一郎」という特異な人物も、精神科医の鷲谷真梨子との関係も、刑事の茶屋の性格も、本作では説明されないからだ。とくに「鈴木一郎」が何者なのか、この作品だけ読んだ人には分からないだろう。
上下巻のボリュームだが、しかしテーマが拡散したまま、うまく収束していない。登場人物たちはそれぞれに個性的でいい味を出しているのだが、構成が行き当りばったりで、さまざまなエピソードが放りだされたままの印象をうける。殺人鬼「イブ」も、思わせぶりなわりには、これだけ?って感じがするのだ。
このラストだと、もう一作、「脳男III」を書くのだろう。しかし、シリーズ・キャラクターとして何度も登場すると、「鈴木一郎」は何でもできるスーパー・ヒーローという位置づけになってしまいかねない。そうしてしまうには、「鈴木一郎」はあまりにもったいないのである。
ここは作者にふんばってもらい、3作目で「鈴木一郎」に決着をつけてほしいところだ。まだ見たことのない世界を見せてもらいたいのである。