2008-01-01から1年間の記事一覧

ヴァン・ダインの評価2

おそらく、ヴァン・ダインをどう評価するかは、黄金時代の探偵小説をどうとらえるか、ということに繋がる。 戦前の日本では、ヴァン・ダインのような作品が、長篇探偵小説のひとつの理想とされた。その評価は、戦後になっても長らく続き、例えば九鬼紫郎の『…

ヴァン・ダインの評価

ヴァン・ダインの読書会を来月にやる、というので、何十年ぶりに、読んでみようと思っている。 で、読書会の参考に、ヴァン・ダインの歴史的評価を調べてみることにした。

怪盗の宝(補遺その3)/ワトスン、撃て! 

『四つの署名』のテムズ河追跡シーンでは、ワトスンもホームズと共に拳銃を携帯し、クライマックスでは蛮人トンガに向けて発砲する次のようなシーンがある。

『首無の如き祟るもの』三津田信三

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)作者: 三津田信三出版社/メーカー: 原書房発売日: 2007/04メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 108回この商品を含むブログ (139件) を見る

2008年6月の屋根裏の散歩会

開催日時 2008年06月15日(第三日曜日) 場所 豊島区勤労福祉会館(東京都豊島区西池袋2-37-4) http://www.toshima-mirai.jp/center/e_kinrou/ 読書会テキストは 「今さらながら、この本を読む」シリーズはいったんお休みして、今だから、この本を読む(やっ…

怪盗の宝(補遺その2)

では、今度は最後の文章。おおくは、ワトソンが「僕は(この事件の)おかげで妻まで得るし、ジョーンズは名声を博する。それで君自身はいったい何を得るんだい?」という問いかけへの返事である。もちろん、原作はこうだ。

怪盗の宝(補遺その1)/やめたまえ。ぼくは医者として、きみに命令する。

『四つの署名』を児童書として出す時、もっとも気になるのは、やはりホームズのコカイン癖だろう。これについては、パシフィカ版《シャーロック・ホームズ全集》の巻末のエッセイ(ジョン・マレー版『四つの署名』の序文の翻訳)でも、グレアム・グリーンが…

怪盗の宝(その2)/落ち着け、ホームズ!

山中ホームズの原作にない特徴のひとつが大食いであるのは、すでに何度も述べた。今回も、「ホームズはいつものとおり、ぼくの三倍は食った。」(p155)と、相変わらずの健啖ぶりを見せている。もうひとつの特徴として、ことあるごとに、「プラス何点!」「…

怪盗の宝(その1)

山中ホームズの第3作は『四つの署名』を原作とする『怪盗の宝』である。もちろん、この題名は、ショナサン・スモールが手に入れたアグラの大財宝に由来する。原作は一部・二部とは銘打たれていないが、実質上は最終章の「ジョナサン・スモールの奇怪な物語…

恐怖の谷/補遺その3――野田改作とレンザブロック・ホームズ

前回、書き忘れたことからはじめよう。 講談社版の久米元一訳『消えたスパイ』にある、「ホームズがここに私立探偵の事務所をひらいてから、すでに二年あまりになる。」という文章だ。「ここ」というのは、ベーカー街221Bのことで、つまり「緋色の研究」事…

恐怖の谷/補遺その2

児童向けシャーロック・ホームズの邦訳で、『恐怖の谷』が収録されているものを、各種文献で調べて見ると、以下のようになる。書名に「名探偵ホームズ」等とついているものもあるが、便宜上省いた。また、装丁や奥付けを替えていくつかの版が出ているものも…

恐怖の谷/補遺その1

山中版以外の児童向け『恐怖の谷』についても、触れておこう。

恐怖の谷(その3)/謎の暴風と荒波

こうして、マクドナルド警部の要請で、ホームズとワトソンはバールストーン村に向かう。

恐怖の谷(その2)/暗号の不思議

さてさて、山中ホームズ版『恐怖の谷』の第2部は、「謎の暴風と荒波」と題して、原作の第1部、つまりホームズの活躍が語られる「バールストンの悲劇」に相当する。

恐怖の谷(その1)/冒険青年マクマード登場

山中ホームズの第2作は『恐怖の谷』である。『緋色の研究』を元にした第1作『深夜の謎』と同じく、過去の事件を語る原作の第二部を最初に配置し、ホームズが登場するのは後半になってからだ。

MWAジュヴナイル賞1968年

1968年の受賞作は、グレッチェン・スプレイグの Signpost to Terror (1967)である。この作品は、一般向けミステリ作品を網羅したアレン・J・ヒュービンのミステリ書誌 Crime Fiction にも記載されているから、今で言うと、ヤング・アダルト的なものなのか…

MWAジュヴナイル賞1967年

1967年から1969年までのMWAジュヴナイル賞は、受賞作、候補作を含めて、邦訳は一冊もない。

4月の屋根裏の散歩会

開催日時 2008年04月13日(第二日曜日) 開催場所 豊島区勤労福祉会館(東京都豊島区西池袋2-37-4) http://www.toshima-mirai.jp/center/e_kinrou/ 読書会テキストは 「今さらながら、この本を読む」シリーズ第2弾 『不連続殺人事件』坂口安吾 角川文庫・他 …

深夜の謎/補遺その2

続いて、小学館版《名探偵ホームズ全集》の『赤の怪事件』、訳者は偕成社版と同じ久米元一である。ぼくの手元にあるのは、1983年から1984年にかけて出た上村一夫挿絵のものだが、じつはこれは1973年から1974年に出版された小学館版《ホームズ全集》の再刊本…

深夜の謎/補遺その1

ところで、山中ホームズ以外の児童向けリライトはどうなっているのか。最初の『緋色の研究』(山中版では『深夜の謎』)について、手元にあるいくつかの訳を見てみよう。

MWAジュヴナイル賞1966年

1966年のMWAジュヴナイル賞の受賞作は、レオン・ウェア作の The Mystery of 22 East (1965) である。この作品は『恐怖の第22次航海』の題名で、学習研究社の《少年少女サスペンス》シリーズの推理篇の一冊としてとして邦訳されている。

MWAジュヴナイル賞1964-65年

1964年のMWAジュヴナイル賞を受賞したのは、フィリス・A・ホイットニーの Mystery of the Hidden Hand。ホイットニーは第一回(1961年)に続いて二度目の受賞である。この作品も邦訳されていないので、読めない。

MWAジュヴナイル賞1963年(承前)

1963年は、MWA最優秀長篇賞はエリス・ピーターズの『死と陽気な女』に授与され、ロバート・L・フィッシュが『亡命者』で処女長篇賞を受賞、ジョン・ディクスン・カーがグランド・マスターになった年である。

『ぬすまれた宝物』ウィリアム・スタイグ

評論社の「児童図書館・文学の部屋」シリーズの一冊。赤木かん子の『かんこのミニミニ子どもの本案内』で紹介されていたので、読んでみたのだが、近くの市立図書館に行くと推薦図書となっていて、いっぱい並んでいた。

3月の屋根裏の散歩会

場所 豊島区勤労福祉会館(東京都豊島区西池袋2-37-4) http://www.toshima-mirai.jp/center/e_kinrou/ 読書会テキストは 「今さらながら、この本を読む」シリーズ第1弾 『ユダの窓』カーター・ディクスン ハヤカワ文庫・他 散歩会は概ね午後2時〜5時。 …

MWAジュヴナイル賞1963年

MWAジュヴナイル賞の1963年から1965年までは、受賞作、候補作を含めて、邦訳は一作もない。したがって、ぼくは読むことができない。

ゆうれいのでる農場

さて、第二回のMWAジュヴナイル賞は、1961年に発行された児童ミステリから選出されている。前年の『のろわれた沼の秘密』に続いて、フィリス・A・ホイットニーが The Secret of The Tiger's Eye でノミネートされたものの、エドワード・フェントンの『ゆ…

カーを読んでいた頃

そろそろ『ユダの窓』を読もうかと思っている。読書会のためだ。 昔々に読んだので、メイントリックのほかは、ほとんど覚えていない。だから、けっこう楽しみ。ぼくがカーを読み出した頃は、この作品は、かんたんには読めなかった。いわゆる絶版状態だったの…

『指し手の顔』首藤瓜於

指し手の顔 上―脳男2 (1)作者: 首藤瓜於出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/11/30メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (21件) を見る指し手の顔 下―脳男2作者: 首藤瓜於出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/11/30メディア: 単行本この商…

のろわれた沼の秘密

永井するみの『カカオ80%の夏』が面白かったので、今年は、ジュヴナイル・ミステリを少し読んでみよう、と思った。正月以来始めかけている山中ホームズも、まあジュヴナイルなので、しばらくはこの傾向の本を中心の読書計画となりそうだ。